世界遺産、世界遺産と言うけれど

また日本で何カ所かが登録に動いているようですが、日本はもう今の14カ所で充分では? 個人的には、それだって多すぎないか?と思っているのに。徐々に、本来の世界遺産の狙っているところが、いいように曲解されてないかと危惧しております。

世界遺産の登録制度ができたのは、以下のような背景(抜粋)があります。要約すると、価値ある自然遺産や文化遺産でも、その国の状況によっては必ずしもしっかり保存されていくとは限らないので、世界中から知恵やお金を援助しつつ残せる道を探しましょう! ということになります。

文化遺産及び自然遺産のいずれの物件が損壊し又は滅失することも、世界のすべての国民の遺産の憂うべき貧困化を意味することを考慮し、
これらの遺産の国内的保護に多額の資金を必要とするため並びに保護の対象となる物件の存在する国の有する経済的、学術的及び技術的な能力が十分でないため、国内的保護が不完全なものになりがちであることを考慮し、
国際連合教育科学文化機関憲章が、同機関が世界の遺産の保存及び保護を確保し、かつ、関係諸国民に対して必要な国際条約を勧告することにより、知識を維持し、増進し及び普及することを規定していることを想起し、 *1

それならば、しっかりとした法律が整備されている日本。国立公園の指定もあるし、国法・重要文化財の指定もあり、守っていく意志もお金も無い訳じゃない。つまり、本来は世界遺産に登録する必要すらないとも言えます。ほんとに重要な、世界にとっても価値があると考えられるごく限られたところだけ、登録されているのがあるべき姿と考えています。いま準備リストに上がっているところは、価値を認めてもらうためというより、観光の起爆剤目的以外の何者でもないように思えてならない。

知床や屋久島の手つかずの自然は、数千年の歴史で作られたものであり、今後もそのまま残していくべき価値があるでしょう。京都や奈良は、せいぜい紀元後の話でしかありませんが、世界に類のない身分発行所として続いてきた天皇家の歴史を考えれば、まぁ価値はあるでしょう。だけど、日光や石見銀山琉球のグスクなんて、たったここ400年程度の話じゃないですか。それをわざわざ世界遺産に登録して、ピラミッドやマチュピチュと同じ土俵で比較したとき、勝負になるだけの価値があるのかというと明らかに負けてますよね。それにたったここ400年程度の話では、日本人にとってはとても大切なことでも、外国人にほんとにその良さを分かってもらうには、かなりの前提知識から勉強してもらわないといけないし。海外から観光客が来たとして、これがあの○○か〜!と感動する前に、こんなのが世界遺産なの?と思われてしまったりしまいませんかね。

もっともっと、本来の世界遺産のあるべき姿と、そこに住んでいる人達のことと、観光地としてメジャーになることのメリット・デメリットを、しっかり議論して欲しいと思いました。

*1:「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」より